一般社団法人日本ディープラーニング協会 JDLA 認定のE資格 (2022#1) を取得しました。ということで、役に立った教材や講座の所感を忖度なしで記していきます。
これから受験を考える方は参考にしてみて下さい。実際に筆者は複数の認定プログラムを申し込み、比較しました。
そして、難易度も解説します。前置きしておきますと、筆者は頭のいいほうの人間ではありません。
E資格とは?
別名エンジニア資格とも呼ばれ、ディープラーニングの理論を理解し、適切に実装できる能力を証明できる資格となります。
まだまだ認知度が低いE資格ですが、注目度という点では右肩上がりの資格です。G検定と並ぶことが多いE資格ですが、難易度は全く異なります。
合格すると、デジタルバッジも貰えます。
データサイエンティスト
E資格を解説する前に、まずデータサイエンティストについてです。
データサイエンスとは、アルゴリズムや統計など情報科学理論を活用してデータを分析、有益な知見を見いだすことを指します。
そしてデータサイエンティストとは「データサイエンス力、データエンジニアリング力をベースにデータから価値を創出し、ビジネス課題に答えを出すプロフェッショナル」と定義されています。
https://www.i-learning.jp/topics/column/business/data-scientist.html
言い換えると、データをごにょごにょしてみて、いい感じにする方法を考えるプロです。データサイエンティストの人材不足は、最近よく謳われています。
AI エンジニア
データサイエンティストの延長線上が AI エンジニアです。データサイエンティストのように、データを活用・分析できる能力だけではなく、そのデータをディープラーニング活用してシステム化できる能力が追加で求められます。
つまり、 AI エンジニアはデータサイエンティストの知識も必要になってきます。データの取り方、データの整形などなど。
E資格
そして、やっと本題のE資格です。E資格は、 AI エンジニアとして基礎的な仕組みと基礎的な実装ができる能力を証明できる資格となります。
データサイエンスの基礎的な知識や AI 実装化の基礎の証明です。
難易度
IT スキル基準
国家資格などと難易度を比較する際、一つの基準となるのが ITSS (IT スキル標準) です。E資格の ITSS 算出として参考になるのは「富士通ソフトウェア技術者認定制度」でしょう。
富士通ソフトウェア技術者認定はスキルレベルを ITSS に準拠し、L1 ~ L5 まで設けています。 今現在、存在する資格試験は ITSS レベル 4 が最高レベルです。IT 系資格の最難関と言われている IT ストラテジストも ITSS レベル 4 です。
E資格を取得し、申請すれば L4 (ITSS レベル 4 と同等) の FUJITSU Certified Master AI 資格が付与されます。G検定は ITSS レベル 2 です。
つまり、富士通が、E資格は資格試験の最高難易度 ITSS レベル 4 とみなしているということです。
他試験との比較
"応用技術者試験以上の難易度との回答が7割以上" というアンケート結果があります。
そう考えると、ITSS レベル 3 の応用技術者試験より上、つまり ITSS レベル 4 と富士通が判断しているのは頷けます。
過去問がない
E資格は過去問での対策ができません。厳密に言えば、過去に出題された問題に関する情報を流出させることは禁じられています。
つまり、過去問を解いて試験対策をするということができません。
なので、後ほど紹介する黒本を購入したり、講座 (認定プログラム) 内の試験対策問題を解く方法くらいしかないのです。
答えを覚える試験ではなく、問題の意図を理解し考える試験ということです。実装力の証明ということも考えると、こちらも納得です。
合格率は高いけど、実際は?
以下はE資格の合格率です。合格率を見ると「7割くらい合格しているのだから、簡単な試験なのだろう」と感じてしまいます。
しかし、これには罠があります。この合格率は、認定プログラム講座修了者をさらに絞った数字となります。
では、認定プログラムを修了できる人の割合はどの程度なのか気になりますよね。
こちらに関しては、正確な数字をそれぞれの講座で公表していませんが、講座によっては1割程度という話もあります。
一概に資格試験のみのものと比較することはできませんが、上記を踏まえると 10% 弱の合格率となります。そう考えると、難易度の高さが伝わると思います。
講座 (認定プログラム) 比較
それぞれホームページを見てしまうと良いことばかり書いてあるので、迷ってしまいますよね。毎度おなじみ、今回も筆者は忖度なしで比較していきます。
まず初めに、認定プログラム講座は、全体を通して下記のように2講座に分かれているものが多いです。
- 基礎講座 (数学や統計学やプログラミング)
- E資格講座
全部入りの講座としては、合格保証付きの Aidemy 等ありますが、当然ながら料金が高いです。
基礎講座を受けるか悩んでいる人へ
基礎講座を受講するか迷っている人は、AVILEN 提供の E資格基礎知識チェック で判断できます。
こちらの問題がスラスラ解けるようであれば、基礎講座は不要と考えて良いでしょう。ちなみに、恥ずかしながら筆者は全然分からなかったので、基礎講座も受講しました。
では、上記を踏まえて紹介していきます。
筆者が実際に申し込んだ講座たち
【筆者受講】AVILEN - 全人類がわかるE資格コース
評価
講座: | |
サポート: | |
費用: | |
Average: |
料金形態
内容 | 受講 | 料金 |
---|---|---|
E資格コース | 必須 | 149,600円 (税込) |
基礎講座 | 任意 | 110,000円 (税込) |
E資格オンライン模試 | 任意 | 16,280円 (税込) |
最新論文解説講座 | 任意 | 16,280円 (税込) |
所感
最終的に筆者はこちらの講座でE資格を取得しました。
E資格合格率が高いと評判で、ここなら無駄な時間を労せず合格できると思ったからです。E資格取得コースだけだと不安な人のために、基礎講座も用意されています。
選んだ理由
AVILEN を選んだ最終的な理由としては、質問し放題だったことです。
というのも、資格勉強を e-Learning で黙々と進めた場合、筆者は必ず納得のできない解説にぶちあたることがありました。
そういう時、ネット上で調べる時間が非常にかかるものもあります。
時間を考えると、タイムイズマネー的な考えで、質問できるのは非常に役に立ちました。
質問方法
質問は講座受講者がメンバーとなっている Slack で行っていました。1:1の質問ではありません。
また、2022#2 からは、AVILEN 独自のシステム上での質問対応に変わりました。質問を投稿すると、その質問に対して一人ひとり回答いただけます。
それに加え、質問しようと思った疑問の大半が、他の人が既に質問していることが多いです。なので、過去ログを遡るとそれだけで解決することもあります。
E資格オンライン模試
E資格オンライン模試 は、講座を受講している人であれば、ほぼ間違いなく受けていると思われます。
少しでもE資格の合格率を高めたいですからね。筆者も受験し、得点率の参考と復習に役立てました。
少しでも安く
割引でE資格コースや基礎講座セットを提供している時期があるので、そのタイミングを狙って申込みをすると、費用が少し抑えられて良いと思います。
記事執筆時点では、現在もキャンペーン中のようです。
良いところ
- 質問が無制限に可能
- 講座の最終課題に自作ディープラーニングの実装があり、作成物として残る
- 2回の質問面談が受けられ、勉強方法や課題の取り組み方の相談も可能
悪いところ
- 永遠に回答されない質問がある
→ 回答を催促する必要あり - 2回面談があると明記されているにも関わらず、試験間近になると満員になり、2回目が受けられない
→ かなり早めに2回目の面談予約を入れる必要あり
【筆者受講】キカガク - ディープラーニングハンズオンセミナー
評価
講座: | |
サポート: | |
費用: | |
Average: |
料金形態
内容 | 受講 | 料金 |
---|---|---|
ディープラーニングハンズオンセミナー (E資格対策コース付) | 必須 | 77,000円 (税込) |
所感
まず、ホームページを見ても、E資格を取得できるコースの申し込み方が非常に分かりづらいです。
いきなり申込みというわけにもいかないと思うので、まずは「お問い合わせ」から面談をしたいとお願いすると良いです。
ページ内の料金表
基本的な進め方の流れとしては、キカガクの独自システム上で e-Learning を進めていくスタイルです。
とても進めやすく、分かりやすいインターフェイスです。もし質問対応を受付していたら、筆者はキカガクでE資格を受講していたと思います。
質問対応があるだけで合格率もグンと上がると思うので、追加料金オプションで質問対応するのが良いのになあと思いました。
また、柔軟な図や説明が必要な単元の場合は、ペンで手書きしている様子をカメラで映して、それを講座の動画としています。これが非常に頭に入りやすく理解しやすいです。
ちなみに、基礎講座もディープラーニングハンズオンセミナーに付属しています。質問する必要なんて無いよって人は、こちらのキカガクの講座で必要十分だと感じます。
また、質問には非対応ですが、講座自体の解説などに誤りがあった場合は画面右下のフィードバックからコンタクトをすることは可能です。
【筆者受講】Study-AI - ラビット・チャレンジ
評価
講座: | |
サポート: | |
費用: | |
Average: |
料金形態
内容 | 受講 | 料金 |
---|---|---|
入会金 | 必須 | 22,000円 (税込) |
月額 | 必須 | 3,300円 (税込) |
所感
とにかく安いです。しかし、安いだけでなく、実は期間によって先着で基礎講座も付属されることがあります。他社を寄せ付けない圧倒的なコストパフォーマンスです。
基礎講座では、「AIドルと一緒に学ぼう」という、知識のない同じ目線での学習が進められる講義動画もあります。分からないところを一緒に学んでいけるという点でとても良いものでした。
また、基礎講座の数学講座は非常に分かりやすく丁寧でした。基礎知識を最もつけやすいのはラビットチャレンジかもしれません。
筆者がラビットチャレンジを選ばなかった理由としては、質問ができない事と、講座内のサンプルコードがコピペできなかった事です。
動画内で提示されているサンプルコードですが、全部手打ちするのってかなりストレスですよね。
基礎講座だけコピペできなかったのかは分かりませんが、これを理由に筆者は他の講座にしようと考えてしまいました。
Python を扱うのが初めてで、十分に学習の時間が確保できる初学者であれば、むしろラビットチャレンジでもよいのかもしれません。というのも、E資格に合格するためであれば、後に紹介する黒本・ゼロつく1・ゼロつく2をやり込めば必要十分だからです。
参考にして欲しい講座
Aidemy PREMIUM E資格コース
こちらの講座、筆者がE資格について調べていた時は、なんと50万円超えの超高級(?)講座でした。現在サイトに行ってみると 327,800円 (税込) となっていて、前よりは安くなりましたが高い。。
と思ったのですが、振り返ってみたんです。筆者は AVILEN でE資格講座を進めて行きました。実は、基礎講座を考えると結局の合計費用はそんなに変わっていません。
AVILEN | Aidemy |
---|---|
【基礎講座】110,000 円 | 【E資格対策講座】327,000 円 |
【E資格講座】149,600 円 | |
【E資格オンライン模試】16,280 円 | |
【最新論文解説講座】16,280 円 | |
合計 292,160 円 | 合計 327,000 円 |
AVILEN の講座は長期的に非常に高い合格率を誇っています。この合格率のカラクリとしては、本番以上に難しい認定プログラム修了試験に合格する必要があるということです。
AVILEN の認定プログラム修了試験で必死に勉強するので、自ずと講座の合格率が高くなる訳ですね。逆に言うと、この難しい修了試験をクリアできずに、E資格浪人する人も存在しました。
Aidemy は質問放題ですし、面談もついています。進め方が分からない人にとっては嬉しいですね。
さらに、合格保証制度もついていることもあり、他社と比較すると価格は高いです。しかし、合格後の転職相談までついているのは良いですね。AI エンジニアへの転身を考えている人にとっては、最も良い認定プログラムは Aidemy かもしれません。
とりあえず申し込みをしてみて、自分と合わないと感じたなら受講開始から8日目にキャンセルでも良いと思います。全額返金されます。
E資格取得で役に立つもの
書籍
徹底攻略ディープラーニングE資格エンジニア問題集
徹底攻略ディープラーニングE資格エンジニア問題集 第2版 (徹底攻略シリーズ)
なんと言ってもこれです、とにかく必須。通称黒本。いろんな人がこれやっておけば大丈夫と言っていますが、本当にこれをちゃんとやっておけば、ほぼ合格点近く取れるようになる難易度です。
ほぼ、と言ったのは、ネット上の昔の記事などを見た上での所感を述べると、最近あまりこちらの内容からは出題されなくなっている傾向がありそうです。
実際、認定プログラムで紹介してくれる公式例題の出題が目立ちました。
それに、これさえやっておけば大丈夫な状態になっていると、講座の意味が薄くなってしまいますからね。
とはいえ、まだまだE資格に大変役に立つ書籍です。書籍お役立ち度 No.1 です。
ゼロから作るDeep Learning
ゼロから作るDeep Learning ―Pythonで学ぶディープラーニングの理論と実装
通称ゼロつく。本当に分かりやすく書かれていて、講座で理解できない、ググっても分からない、そういう時はこのゼロつくを見ると理解できるという事が多いです。
ディープラーニングでは逆伝播という考え方があるのですが、そういう難しい用語でさえ「りんごとみかんの個数」を例にとって解説してくれています。
こちらもE資格を受験する上では必須の書籍です。
ゼロから作るDeep Learning 2
ゼロから作るDeep Learning 2 ―自然言語処理編
上記で紹介した「ゼロから作るDeep Learning」の続編です。E資格ではこちらの分野も試験範囲に含まれるので、1と同様にこちらの書籍も必須となります。
深層学習
こちらもよく紹介されている事の多い書籍です。
筆者は購入こそしたものの、この書籍はノータッチでE資格が取得できました。なので、特段必須な書籍ではないです。
黒本とゼロつく1とゼロつく2をやり込んだほうが、E資格合格には近づきます。余力がある人向けですね。
その他
MindMeister
MindMeister
https://www.mindmeister.com/
非常に使いやすいマインドマップサービスです。E資格は範囲が幅広く、覚える事項もたくさんあります。
脳内で整理する際に、マインドマップは非常に役に立ちました。
AIcia Solid Project
データサイエンス Vtuber アイシア=ソリッド さんの YouTube チャンネルです。難しいものを分かりやすく噛み砕いて解説してくれるので、スッと頭に入ってきます。
講座を受講して、どういう感じなのか小難しくてわからない!というものがあると思います。
そういう時は、まずアイシアさんの動画をみて大枠を理解するのと進みが良いです。
まとめ
E資格に合格すると、一層 AI に関する知識や技術が深まり、基本的な AI モデルであればサクッと作れるようになります。
ちなみに、筆者の合計勉強時間は、恐らく400時間ほどです。数学なんてとうに忘れてしまったとはいえ、大学は理系で卒業しています。ですが、数学や統計学についてはかなり難しく感じました。
数学に自信がない人は、素直に基礎講座も一緒に受講することをおすすめします。